僕は君に夏をあげたかった。
「……泣いていいのよ、麻衣ちゃん」

「……っ、あずささん………でも………」

「好きな人が、大切な人が死んだときは泣いていいの。そうして、悲しんでいいのよ。麻衣ちゃんが佐久良くんを思って泣いた分だけ、佐久良くんが生きていた時間に意味が出るの。麻衣ちゃんがそれくらい佐久良くんが好きだった。

自分をそれほど好きだったひとがいる。それは、佐久良くんの何よりの生きた証よ。」

「……あずささん………」

「それでね、たくさん泣いたら、麻衣ちゃんは生きようね。生きて、佐久良くんのことときどき思い出しながら生きようね。それはきっと一緒に生きるってことだから」

「………いっしょ……….に………」


その言葉に、一気に目から涙が溢れだす。


「……う………ああああっ、うわあああああっ………ああああああああんっ………!」


私は声をあげて泣いた。

佐久良くんの絵を抱えて、そして

あずささんの胸の中で泣いた。



泣いて、泣いて、泣いて。

そのぶんだけ私の中に佐久良くんが刻まれていく。

私は佐久良くんと生きていく。

佐久良くんの想い出と生きていく。


佐久良くんがくれた未完成な夏を忘れない。


私はそれを抱えて、生きていくんだ。
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