僕は君に夏をあげたかった。
ゆっくりと電車は大阪へと戻る。

私の家へと。

これから私が生きていく街へと。


これからもきっと色々なことがあるだろう。

つらいことも悲しいこともあるだろう。

また、生きていくのがつらいこともあるだろう。


それでも私はこの世界で生きていくことを選んだ。


窓からは海が見える。

青く、どこまでも続くような広い海。

ちっぽけな私が生きていく世界は、こんなにも広く大きい。


ここには


死にたいと嘆く人がいて

生きたいともがく人がいて

ちっとも平等じゃない運命があって


そんな中を、私は生きていく。


あなたが生きようと必死に戦った世界だから

あなたの想い出を抱えて

あなたと一緒に生きていく。


ずっと、ずっと……….


「……そうだよね、佐久良くん……」


小さくつぶやいた言葉。

誰にも聞こえないくらいのささやき。


それに答えるかのように

窓越しの海が、きらりと、光った。




ーーーーーーーendーーーーーーー




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