僕は君に夏をあげたかった。
「……あ、おーい! 麻衣(まい)ちゃーん!」
駅を出ると、すぐ真ん前に白いトラックが停まっていた。
そばに立っていた麦わら帽の老人が、名前を呼びながら私に駆け寄る。
その顔には見覚えがあった。
帽子からはみ出した髪は記憶よりずっと白いし、シワも増えているけれど、間違いない。
――――おじいちゃんだ。
「……おじいちゃん」
少し戸惑いながらもそう呼ぶと、おじいちゃんはシワを目一杯深くして、ニコニコ笑った。
「よう来たなあ、麻衣ちゃん。久しぶり!
こんなに大きなって。それに、べっぴんさんになったなあ……」
「そ、そんなこと……」
「いやいや。ホンマきれいになった。恵美子によう似てきたわ。
…さ、電車疲れたやろ? 早く家に行こう。荷物は荷台に積んだらええから」
おじいちゃんは私のバッグを持つと、軽々とトラックの荷台に積み込む。
服や、その他にも色々詰めていて、かなり重いはずなのに、全く大変そうな素振りを見せなかった。
よく日に焼けていて、たくましいおじいちゃんの身体。
確かもう70歳を越えているはずなのに、それを感じさせない若々しさだ。
ろくに外出もせず、真っ白でヒョロヒョロの私とは大違い……。
「……おじいちゃん、ごめんね、迷惑かけて」
そう謝ると、おじいちゃんは意外そうに目を見張った。