僕は君に夏をあげたかった。
砂浜で飲むラムネは夏の味がする。

甘さも炭酸の刺激もどこか儚くて、いつの間にか終わる小学生の夏休みみたい。

それでも、気づかないうちにかなりのどが渇いていたのか、冷たいラムネはとても美味しく感じた。

一気に半分くらい飲み干し、隣に座る佐久良くんに目をやる。

彼はゆっくり一口ずつラムネを飲んでいた。

瓶の中のビー玉が彼が飲むのに合わせてコロコロ動くのが、なんだか可愛かった。


(…あ、ビー玉…)


私はふと思いだし、さっき拾ったビー玉をポケットから出した。

透明な色、そして大きさ。

多分、ラムネの中に入っているのと同じもの。

誰かが私たちのようにここでラムネを飲んで、中から取り出したのだろうか。


(……うーん。でもどうやって出したんだろう)


ラムネの飲み口は小さく、ビー玉を取り出せる大きさではない。

もちろん他に穴があいてるわけでなく……

やっぱり瓶を割ったのだろうか。


「……どうしたの、松岡さん。難しい顔して」

「え」

「あ、もしかしてビー玉ほしいの?」

「い、いや。そうじゃなくて…。さっき、そこでビー玉拾ったから、ラムネの中のやつだったのかなって」


佐久良くんの目の前に、拾ったビー玉を差し出す。


「…本当だ。きっとそうだね、ラムネのやつだ。どうやって取り出したんだろ」

「そう! そうなの。私もそれが気になって考えてたの。割ったのかなー……うーん……」

「……ふっ」


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