僕は君に夏をあげたかった。
佐久良くんは、まだまだ残っているラムネをゆらゆら揺らしながら、こちらを覗きこんでくる。

薄い色の目が私を映す。

なぜかラムネのビー玉が思い出された。


「……中学のころの話をされるの、いやだった?」

「別に、そんなことないけど……」

「けど?」

「なんか、佐久良くんが覚えてる私って、かなりバカみたいじゃない……っ。恥ずかしいし………」

「そう?そんなことないだろ」


佐久良くんは、本当にそう思っていないのか、キョトンとした顔で首をかしげる。

それからなぜか少しだけ寂しそうに微笑むと、遠くをみるように海へと目を向けた。


「俺は松岡さんの、そういうとこ好きだったよ」

「え、……!?好、きって……っ」

「そんな風に……いろいろなことを不思議そうに目を輝かせて見ているとこ。松岡さんの目にはどんな風に世界が見えているのか、ずっと気になってた。うらやましいと思うこともあったよ」

「うらやましい……?」

「うん。松岡さんには、きっとたくさんのものがすごく楽しそうに、きれいに見えているんだろうなって……」


そう言った佐久良くんは、やっぱり少しずつ寂しそうだった。


「あ、馬鹿にして言ってるんじゃないから。俺は……君のそういうところを……いいな、とずっと思っていたんだ」

「…………」


それは。

一体どういう意味なのか。



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