僕は君に夏をあげたかった。
「……じゃあ、そろそろ始めようか。あんまり暑くなると、大変だし」
佐久良くんは『日記』だというスケッチブックをテトラポットに立て掛け、それとは違うクロッキー帳を取り出した。
もう照れた様子もなく、いつもの儚くも凛とした佐久良くんだ。
「……う、うん」
急に恥ずかしさがこみ上げてくる。
今から本当に佐久良くんのモデルをするのか。
わかっていたことなのに、落ち着かなくてそわそわしてしまう。
「……ぽ、ポーズとかは、どうしたらいいかな?あ、やっぱり海のそばがいい?それともテトラポットかな……っ」
「松岡さんの好きにしていいよ。動いてもいい」
「え、……本当?」
「うん。そのままの松岡さんを描きたいから」
微笑んでそういう佐久良くん。
その笑顔に、言葉に、モデルの恥ずかしさとは違う種類の照れで顔が熱くなっていく。
そして同時に襲う苦しさ。
……今のありのままの私なんて……描く意味あるのかな。
「……松岡さん」
「え……」
「いいんだよ、そのままで」
「……」
まるで見透かしたみたいな佐久良くんの言葉に、また泣きたくなる。
どうして、そんなことを言うのかな。
今の私のこと、なにも知らないはずなのに。
佐久良くんは『日記』だというスケッチブックをテトラポットに立て掛け、それとは違うクロッキー帳を取り出した。
もう照れた様子もなく、いつもの儚くも凛とした佐久良くんだ。
「……う、うん」
急に恥ずかしさがこみ上げてくる。
今から本当に佐久良くんのモデルをするのか。
わかっていたことなのに、落ち着かなくてそわそわしてしまう。
「……ぽ、ポーズとかは、どうしたらいいかな?あ、やっぱり海のそばがいい?それともテトラポットかな……っ」
「松岡さんの好きにしていいよ。動いてもいい」
「え、……本当?」
「うん。そのままの松岡さんを描きたいから」
微笑んでそういう佐久良くん。
その笑顔に、言葉に、モデルの恥ずかしさとは違う種類の照れで顔が熱くなっていく。
そして同時に襲う苦しさ。
……今のありのままの私なんて……描く意味あるのかな。
「……松岡さん」
「え……」
「いいんだよ、そのままで」
「……」
まるで見透かしたみたいな佐久良くんの言葉に、また泣きたくなる。
どうして、そんなことを言うのかな。
今の私のこと、なにも知らないはずなのに。