僕は君に夏をあげたかった。
「迷惑って、何や? わしは、久しぶりに麻衣ちゃんと会えて嬉しいで」
「でも……」
うつむく私の頭を、おじいちゃんの大きくて乾いた手が、優しく撫でた。
「ええから。それより、乗りや。家でスイカを冷やしてる。麻衣ちゃん、好きやろ?」
「……ん。ありがとう、おじいちゃん……」
トラックの助手席に乗り込み、シートベルトをしめる。
夏の日差しですっかりシートは温まっていて、背中と太ももにじんと熱が伝わった。
「…はー、暑いなあ。待ってや、麻衣ちゃん。すぐに冷房つけるからな」
運転席に座ったおじいちゃんがため息まじりに車内クーラーに手を伸ばす。
私はそれを『待って』と制した。
冷房の聞いた電車でここまで来たせいか、身体が妙に冷えている。
それに電車に酔ったから、もう少し外の空気が吸いたかった。
「クーラーはいいから……。それより、窓を開けてもいいかな」
「お、ああ。ええで。麻衣ちゃんの好きにし」
「ありがとう」
窓を開けるとほぼ同時に、トラックは走り出す。
駅から遠ざかるとともに、店や家はどんどん少なくなっていった。
『イナカ』だなんてつい言ってしまったけれど、それでも駅の周辺は開けていた方らしい。
窓から見える景色は、青い空と白い雲。緑の田畑。
セミの声がどこまでもどこまでもついてきた。
涼やかな風が車内に吹き込む。
それはどこか生ぬるく
(…海の風だ)
潮の香りをはらんでいた。
「でも……」
うつむく私の頭を、おじいちゃんの大きくて乾いた手が、優しく撫でた。
「ええから。それより、乗りや。家でスイカを冷やしてる。麻衣ちゃん、好きやろ?」
「……ん。ありがとう、おじいちゃん……」
トラックの助手席に乗り込み、シートベルトをしめる。
夏の日差しですっかりシートは温まっていて、背中と太ももにじんと熱が伝わった。
「…はー、暑いなあ。待ってや、麻衣ちゃん。すぐに冷房つけるからな」
運転席に座ったおじいちゃんがため息まじりに車内クーラーに手を伸ばす。
私はそれを『待って』と制した。
冷房の聞いた電車でここまで来たせいか、身体が妙に冷えている。
それに電車に酔ったから、もう少し外の空気が吸いたかった。
「クーラーはいいから……。それより、窓を開けてもいいかな」
「お、ああ。ええで。麻衣ちゃんの好きにし」
「ありがとう」
窓を開けるとほぼ同時に、トラックは走り出す。
駅から遠ざかるとともに、店や家はどんどん少なくなっていった。
『イナカ』だなんてつい言ってしまったけれど、それでも駅の周辺は開けていた方らしい。
窓から見える景色は、青い空と白い雲。緑の田畑。
セミの声がどこまでもどこまでもついてきた。
涼やかな風が車内に吹き込む。
それはどこか生ぬるく
(…海の風だ)
潮の香りをはらんでいた。