僕は君に夏をあげたかった。
それからすぐに再婚相手を紹介された。

うちのリビングのソファーで、当たり前のようにお父さんの隣に座る女性。


「……高松あずさです」


そう名乗った彼女は、お父さんと同じ年くらい。

少し茶色い髪に、一重のたれ目。

お母さんとは全然似ていない。

お父さんがどうしてこの人を選んだのか理解出来なかった。


「麻衣ちゃん、よろしくね」

「…………」


優しく私に笑いかける彼女を私は無視して、黙りこむ。


「麻衣子、ちゃんと挨拶しなさい」

「あ、いいんですよ。優一さん。突然だもの、戸惑うのも当然だわ。
……麻衣ちゃん、ゆっくりでいいから、たくさんお話出来ると嬉しいな。

麻衣ちゃん、絵を描くのが好きなんでしょう?実はね、私も学生時代美術部だったの。今度、良かったら麻衣ちゃんの絵を見てみたいな」

「……あんたに関係ないじゃん」

「麻衣子!」

「うるさいな……!
再婚は別にいいよ、好きにしなよ。でも、私は仲良くするつもりなんてないし、家族だなんて思わないから……!」


そう叫ぶと、お父さんは目を見開き、あずささんは悲しそうに目を伏せた。

その傷ついたような様子が私を余計にイライラさせた。
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