僕は君に夏をあげたかった。
それからお父さんの転勤も再婚も予定通りにすすみ

3月、私たちは大阪に引っ越した。


高校は新居近くの学校を受験して、無事に合格。

家から近いというだけで選んだその学校はセーラー服で、スカーフの赤色がものすごく趣味じゃない。             

カオリや他の友達とは引っ越ししてしばらくはLINEや電話をしていたけれど、高校が始まるとその頻度は減った。

たまにするLINEも新しい学校や友達の話題が増え、私はそれについていけなくなる。

私は……高校で周りに馴染めずにいたから。


全く知り合いのいない新生活。

自分と違う方言、言葉のイントネーション。

土地勘もなく、会話にでてくる出身中学や、近くで人気のスイーツショップの話もわからない。

いつの間にか出来ていく友達グループ。楽しそうな関西弁まじりの談笑する声。

そしてそれに加われない私。

関西弁の飛び交う教室では、自分のイントネーションや話す言葉が気になって、うまく発することができない。

そうしているうち、友達が一人も出来ないまま、高校生活はひと月ふた月と過ぎていった。

入ろうと決めていた美術部も、見学に行く勇気が出ずに見送りに。

(……これが東京なら。引っ越しなんてしなければ……)

そう思えば思うほど、言葉はでない。笑うこともできない。

カオリの高校生活が楽しそうでキラキラして見えて……LINEをするのが苦しい。

やがて返信をするのがつらくなり、カオリからの連絡も減っていき、LINEのやりとりは途絶えてしまった。
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