僕は君に夏をあげたかった。
それから数日して

ある日の夜中にドアがノックされた。

起きてはいたけれど、聞こえないふりをして無視をした。

お父さんか、あずささんか。

どちらにしても会いたくない。


「…麻衣子、起きているか?」


やがてドアの向こうからうかがうようなお父さんの声。

私は尚もそれを無視する。

するとまたもノックの音がした。


「……麻衣子、開けてくれないか。話がしたい」

「………」

「家族のこれからのことだ」

「……………これ…から?」

「ああ、そうだ。私達家族はこのままじゃいけない。変わらないと」

「………」


それはどういうことだろう。

変わる………。

再婚する前に戻ってくれるとでもいうのだろうか。

そんなわけない、と思いながらも私はドアを開け、お父さんを部屋に迎え入れた。

お父さんとまともに顔を合わせるのは久しぶりだった。


「……麻衣子。この前はすまなかったな。……叩いてしまって……」

「別に。もう……平気」

「そうか……。なあ、麻衣子、あずささんのことだが……」

「なに。私、あの人を家族だなんて思えないから」

「………ああ。そうだな。
私達には時間が必要だと思うんだ。お互いに冷静になる時間が」

「え?」


お父さんは真っ直ぐに私を見据えた。
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