僕は君に夏をあげたかった。
しばらくして
閉じられたふすまの向こうから、おじいちゃんの呼び声が聞こえてきた。
「……麻衣ちゃん、ちょっとええか?」
「………」
泣いたから頭が痛い。
ガンガン響く頭をおさえながら、ふすまを開けた。
ーーにゃー…
「え?」
「麻衣ちゃん、…こいつがうちの前で鳴いてたんやけど」
そういうおじいちゃんの腕の中で、猫が丸くなっている。
赤い首輪の、しなやかな猫。
「……シジミ」
シジミはおじいちゃんの腕からすりぬけ、私の足元へすり寄る。
なー、と心なしか悲しそうに鳴いた。
「このこ、本屋で飼われとった野良猫やろ。誰かを呼んどるみたいに鳴いてたんや。ひょっとしたら麻衣ちゃんに会いに来たんかなと思って……」
「私に………会いに」
シジミはまた一声鳴く。
「もしかして、心配してくれたの…?」
私はシジミを抱き上げ、その体温を包み込むように抱き締める。
シジミの体は温かく、かすかな鼓動を感じた。
なんだか鼻の奥がつんとする。
「……麻衣ちゃん。その子、うちで面倒みてもええからな。その猫が居りたそうにしとるなら、ここにおいとってやり」
「おじいちゃん……ありがとう」
私はシジミの頭をゆっくり撫でた。
「……シジミ、私と一緒にいてくれる?」
シジミの鳴き声が少し力強いものに変わったように聞こえた。
閉じられたふすまの向こうから、おじいちゃんの呼び声が聞こえてきた。
「……麻衣ちゃん、ちょっとええか?」
「………」
泣いたから頭が痛い。
ガンガン響く頭をおさえながら、ふすまを開けた。
ーーにゃー…
「え?」
「麻衣ちゃん、…こいつがうちの前で鳴いてたんやけど」
そういうおじいちゃんの腕の中で、猫が丸くなっている。
赤い首輪の、しなやかな猫。
「……シジミ」
シジミはおじいちゃんの腕からすりぬけ、私の足元へすり寄る。
なー、と心なしか悲しそうに鳴いた。
「このこ、本屋で飼われとった野良猫やろ。誰かを呼んどるみたいに鳴いてたんや。ひょっとしたら麻衣ちゃんに会いに来たんかなと思って……」
「私に………会いに」
シジミはまた一声鳴く。
「もしかして、心配してくれたの…?」
私はシジミを抱き上げ、その体温を包み込むように抱き締める。
シジミの体は温かく、かすかな鼓動を感じた。
なんだか鼻の奥がつんとする。
「……麻衣ちゃん。その子、うちで面倒みてもええからな。その猫が居りたそうにしとるなら、ここにおいとってやり」
「おじいちゃん……ありがとう」
私はシジミの頭をゆっくり撫でた。
「……シジミ、私と一緒にいてくれる?」
シジミの鳴き声が少し力強いものに変わったように聞こえた。