僕は君に夏をあげたかった。
「違うよ。昨日は俺も無神経だった。正論ばかりを言ってしまって、松岡さんのこと……ちっとも考えてあげられなかった」

「私の……こと?」

「うん。……松岡さんの気持ち」


佐久良くんが私の手を取る。

壊れ物にさわるみたいに優しく、手を握ってくれる。


「松岡さんが、きっと、ずっと、…寂しかったんだってこと」


「……私……?」

「新しい家族ができたり、住んでいるところが変わったり、自分の居場所が変化して、不安にならない人はいないのに、……変わっていく周りの人たちに寂しくならないわけはないのに、こわくないわけがないのに。

きっと、俺も、他の人も、君に頑張ることばかりを、変化を受け入れることばかりさせようとしていた。

まず、何より先にわかってあげないといけないことがあったのに……」


ぐっと、佐久良くんが手を握り、私を引き寄せる。

そして近くに来ると、私の頭を撫でた。


「……こわかったんだね、ずっと。

大丈夫だよ。俺が………守るから」




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