僕は君に夏をあげたかった。
「……佐久良……く」


どくん……と、生きてきた中で一番大きいんじゃないかという音で胸が鳴る。

信じられない言葉に加速していく鼓動。

少し身体が震えているのがわかった。


「……なんかごめん。いきなり、こんな。困るよな」

「そっ、…そんなこと……そんなことない。だって、だって私も……ずっと……その……す、好き……だったから」

「え………」


佐久良くんが目を大きく見開く。

そのまま私たちは見つめあった。

佐久良くんのきれいな目に私が映っている。

それだけで、どうしようもないくらい胸が苦しくなった。


「……松岡さん」

「佐久良くん」

「………好きだ」

「私も………」


そんな、ぎこちない言葉のやりとり。

瞳で、言葉で、交わす気持ち。

佐久良くんの気持ちが、私に優しくそそがれていくのがわかる。

今まで感じたことのないような、心いっぱいまで満たされていくような幸せに、胸が震えた。


佐久良くんは私を抱き締めていた手を、そっと頬に移動する。

その長い指が私の頬を優しく撫でた。

絡み合う視線。

鼓動がうるさいけれど、それと溶け合うように波の音が耳に響く。

私たちはその音をうっとりと聞きながら、触れるだけの短いキスをした。



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