僕は君に夏をあげたかった。
***
その日の夕方。
日が傾き、海面が赤く染まる時間。
私と佐久良くんはまた海に来ていた。
あのとき。
思いが通じあったあのあと。
私たちは、浜辺で遊んでいた子供たちにバッチリ見られていたことに気づいた。
ムードというのは恐ろしいもので
あの告白のときは、子供のことが全く気にならなかったのだ。
(……それにしても、今思っても恥ずかしすぎる)
さすがにあのまま海にいるのは気まずすぎたので、子供がいなくなる夕方ごろにまた会おうと言って、そのときはわかれたのだった。
そして今、手を繋いで波打ち際を歩いている。
何度も佐久良くんとこの海で会っていたのに、こんなふうに歩くのはこれが初めて。
繋いだ手から感じる佐久良くんの温かさ。
ときどき触れ合う肩や腕、息づかい。
何もかもが今までと全然違う。
これが、好きな人と両想いってことなのか。
このくすぐったさや苦しさを、まだうまく言葉にできない。