僕は君に夏をあげたかった。
「……松岡さん、知ってる?もうすぐお祭りがあるんだって」

「え、この町で?」

「うん。青海祭りって言うんだって。
商店街のところに屋台が出て、この浜辺で花火をあげるらしいよ」

「うーん…。なんだかこじんまりしてそう」


ストレートに思ったことを告げると、佐久良くんが苦笑する。


「いや、それが結構にぎやからしいよ。屋台も花火も規模が大きいんだって。この町の人は大抵祭りに参加しているとか」

「ふーん……」


お祭り……

佐久良くんと行きたい、…な。


「……松岡さん、良かったら一緒に行かないか?」

「え!」


考えていることが読まれたのかと思った。


「……いい?」

「う、うん…!行きたい」

「やった」


嬉しそうに笑う佐久良くん。

その笑顔がとてもまぶしく見えて、くらくらしてしまった。

私、この人が隣に居てくれるだけて、本当に幸せ。



「……それにしても、この町って、本当に海が中心なんだね。青海祭りだなんて、海そのまんまって感じだし」

「この町の人にとって、海は特別らしいよ。この町で死んだら、命はこの海に還るんだって」

「海に、還る……」


そういえば、おじいちゃんもそんなことを言っていた気がする。  
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