結婚も２度目だからこそ！

気になって、少し小さな声で河合さんに聞いた。

「なんでまた上手くいかなかったんでしょう……」

「それがさあ、色々とあったのよ。まあ、詳しくは吉岡君から聞いてみるといいわよ、どうせまた今週も誘われるんでしょうから」

「教えてくれますかね？って、また今週って……」

「だいぶ噂になってるわよ、あなたと吉岡君。まあ、吉岡君もいい年だし彼女もいないしね。別に社内恋愛が禁止なわけじゃないし、みんな温かい目で見守ってるから、気にしなくても大丈夫よ」


気にしなくていいって……。


まさか私と先輩の仲が噂されているなんて、思いもよらなかった。


付き合っているわけじゃないから、何か言われても否定すればいいだけだし、別に噂だし気にする必要もない。

私は全然構わないけど、先輩はどうなんだろうか。

私と噂されることで、嫌な思いをしないだろうか。


なんだかんだで私はバツイチだし、正社員でもないし。
そんな女と噂されるって、普通だったらあまりいい気はしないよね。


そう思ったら、もの凄く申し訳なくなってしまう。



――金曜日の昼休み。

トイレに行こうとしたところで、案の定、先輩は私の前にやって来て、飲みに誘った。
でも私はその噂が気になってしまって、答えに言葉を濁した。

「先輩、今日はちょっと……」

「なに？なんか用事でもあるの？今日ちょっと渡したいものがあるから、ちょっとだけ時間貰えない？」

「用事って言うか、その……。渡したいものって、今じゃダメですか？」

「更衣室に行くのが面倒臭い」

「なんですかそれ……」

先輩の返答に思わず脱力してしまうが、先輩はどうやら本気で動く気がないらしい。
行きますと答えない限り、私の前から動くことすらしないようにも見えた。

これではトイレにも行けないし、お昼ご飯を食べに行くこともできない。

「先輩、なんか毎週のように私と飲みに行っていることが、この会社で噂になっているみたいですよ？私は全然気にならないんですけど、先輩は私なんかと噂になってたら嫌じゃないですか？」