結婚も2度目だからこそ!

演奏会

――演奏会当日。

チケットを片手に、会場の前でごくりと息を飲む。

会場までまだあと30分はあるというのに、すでに大ホールの入口では聴きに来た人たちが列をなしている。

まさかこんなに人がいるなんて。
アマチュアの団体だから、もう少しまったりとしていると思ってた。

あまりの人の多さに、昔の本番前を思い出して、少し緊張してしまう。



先輩とはあの飲み会から、ほとんど話をしていない。

先輩の仕事が忙しいというのもあったけど、演奏会が近くなりほぼ毎日練習に追われ、私とたわいのない話をするどころではなかったみたいだった。

もちろん先週の金曜日の飲みの誘いもなかった。


そのことに少し安心してしまった私。

だってあの時の先輩の笑みが、脳裏に焼き付いて離れなくて。
そのたびに胸が高鳴ってどうしようもなくて。

こんな状態で先輩とまともに話せるわけがない。

だから、忙しくて話せなくなったことは、今の自分には良かったと思う。


……だけど、話せないことが寂しいと思う部分もあって。


その複雑な気持ちが何なのか、自分ではだいたいの見当はついてる。
でもそれを認めることができなくて。


理由はどうであれ、私は一回離婚した身。
バツがついた女を、好きになってもらえるとは思わないから。

傷付くのはもうゴメン。
苦しい思いをするのも嫌。

だからこの気持ちはそうじゃないって、思いたい。


早く来すぎてしまった私は、列に並びながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。

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