結婚も2度目だからこそ!

「……てなことがあってね、圭悟のメールで動揺しちゃって。苦しくてつい先輩に言ったの、立ち直るまで先輩に甘えていいですか?って。そうしたら先輩はじゃあ付き合おうって言ってくれて。同じ会社だし、微妙な関係で色々言われるのも面倒臭いから、付き合うことにすれば、私も気兼ねなく甘えられるでしょ?ってさ」


周囲にあれこれ言われない為だけの、苦肉の策。
付き合う前と、先輩との接し方は何も変わらない。

私はそう思っていたんだけど……。


「で?甘えてんの?実際に」

「う、ま、まあ。今までと変わらずに私は接してるんだけど……」

「だけど?」

「いや、その先輩がね……」


接し方が変わったのは先輩の方だ。

付き合う前よりもだいぶ私にベタベタ甘えてくることが多くなった。


会社では今までと変わらずだけど、問題はプライベート。


メールや電話は毎日あるし、金曜日の夜だけでなく土日も会うようになったし。

身体の関係はないけれど、手を繋いで歩くのはもちろん、ふたりきりになれば私を抱きしめてくれる。


それが嫌な訳じゃない。

むしろドキドキして、先輩の体温が心地いいくらいに思っている。


……だけど。

どうして先輩がそこまでやってくれるのか分からない。

「会社の人にあれこれ言われない為の、上辺だけのお付き合いだと思っていたからさ。それがまさか本当の恋人みたいな感じになるとは思ってもみなくて……」


その時、バッグの中の携帯が鳴る。

取り出して見ると、先輩の名前が表示されていた。


「……噂をすれば先輩だ」

「出なよ。もし代われそうなら代わって?私も先輩と話してみたいし」


沙織はニコニコと笑いながら出るように促され、私は仕方なくその場でボタンを押した。
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