結婚も2度目だからこそ!
「智樹……」

ある程度泣いて、ようやく落ち着きを取り戻した私は、先輩の名を呼ぶ。
先輩は声で返事をする代わりに、私をさらに強く抱きしめて反応した。

「智樹は私のこと、どう、思っているの……?」

ずっと気になっていたことを、思い切って投げかけた。


元々、お互いが好きだから付き合っている訳じゃない。

ただ私が寂しくて、ひとりでいるのが辛かったから。
先輩は優しいから、そんな私の為に傍にいてくれるだけのこと。

そう分かって付き合っていたはずなのに、先輩の温もりに触れて、先輩の鼓動を近くで感じて、いつの間にか、私は先輩のことが好きなんだって、分かった。


でも先輩は……?

先輩は私のことが好き?


もしかしたら私が感じている幸せは、私だけが作り上げた幻想なのかもしれない。
私への気持ちはないのかもしれない。

それを考えると、とても苦しくなる。


そんな私の問いかけに、先輩は少し身体を離して顔を覗き込むと、私のおでこを軽くつん、と指で押した。

「あのさぁ、俺が好きでもない女を抱けるほど、軽い男に見える?」

「……へ?」

「その台詞、そっくりそのまま京香に返すよ。京香はどう思ってる?」

先輩は少し膨れた顔で、そう聞き返した。



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