結婚も2度目だからこそ!
"最悪"

その言葉が、一番最初に心の中に浮かんだ。


――圭悟の浮気相手。

圭悟と裸でイチャついてた、あの女。
ファミレスで、私の前で泣きながら項垂れていた、あの女。

あの時の光景が一瞬で蘇った。



私はスッと女から目線を逸らし、改札口へ向かおうとする。
しかし、女は歩みを進め、こちらへと向かって歩いてきた。


「お久しぶりですね、お元気でしたか?」

うっすらと笑みを浮かべて、私に声を掛けた。

あの時の地味なイメージとは変わって、やたらと派手な服。
女を前面に押し出して、嫌悪感すら覚える。

声を掛けられて、逸らしていた目を女に向けたのが間違いだった。
その笑みに怒りを覚えた。

一体、どんな神経をしているのか分からない。
なぜ、私にそんな言葉を言えるのか。

あなたのせいで、家庭がひとつ壊れたというのに。
今までの築き上げたものが、一瞬で無くなってしまったのに。

「……よく、平気で声を掛けられるね」

「ここで会ったのも、何かの運命かと思いますから。あの時、自分の気持ちが整理出来ず、あなたに心からの謝罪が出来なくてずっと引っかかってたんです。だから」

女からの謝罪なんていらない。

あの時念書を作って、慰謝料を少なからず受け取って、それが女からの謝罪として自分では受け止めていたから。

いまさら謝られたところで、昔の辛い思いをただ思い出すだけで、私にはなんのメリットもないのに。


……どうしてそれが分からないの?
私はもう、前を向いて歩き出そうとしているのに、なぜ、それを蒸し返そうとするの。


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