結婚も2度目だからこそ!
思わぬ提案
マンションへと着き、ドアホンのボタンを押す。
智樹は、私以外の人間がこの時間に来る事がないと思っていたのか、ドアホン越しに声がすることもなく、直接ドアが開かれた。
「お帰り、京香……、って、どうした!?」
智樹がドアを開けるなり、私はなだれ込むように智樹の胸の中へ飛び込む。
あまりの勢いに、智樹は少しよろけてしまったが、すぐに体勢を戻して、長い腕で私を包み込んだ。
……あったかい。
智樹の身体の中に包まれた瞬間、一気に安心感が生まれる。
あれだけざわついていた心の中が、智樹の腕の中にいるだけで静まっていった。
「なにかあったのか?」
智樹は私を抱きしめながら、小さな声で聞いた。
少し前の自分なら、「なんでもない」と答えていたかもしれない。
でも、今はひとりで抱え込むには辛すぎた。
智樹に負担がかかるのはよく分かってる。
だけど、隠しておくことは出来なかった。
「……会ったの、駅で」
「誰に?」
「前の旦那の浮気相手。私に会うなり声を掛けてきたんだ、謝りたいって。でも、それは断った。今更謝られても許される事じゃないから。そうしたら、あの女が言ったの。『じゃあ私はそれでもいい、でもあの人には一回だけでもいいから会ってくれ』って」