結婚も2度目だからこそ!
そんな不安を抱えたままでも、普通通り仕事はこなさなければならない。
智樹は会議なのか、朝会社に来てから一度も姿を見ていなかった。

こんな時に限ってすれ違う。

明日はもう土曜日。
それまでに聞こうと思っていたのに、結局聞けずにいた。

今日の夜こそは聞けるだろうか?
どうかこの不安が明日までに無くなればいいんだけど……。


「鳴嶋さん、ちょっといい?」

そんな事をぼんやりと考えていた時、河合さんが声を掛けた。
ハッと我に返る。

やだ、仕事中に余計な事考えてた。

「は、はい!何でしょう?」

「今時間ある?一緒に来てもらってもいいかな?」

急ぎの仕事もないので、頷いて河合さんの後をついて隣の部屋へと行く。
その部屋にはファイルの入った段ボールが積み重なっていた。

「凄い量ですね……」

「今までの企画書やら見積書よ。下の保管室に持っていかなきゃいけないんだけど、ひとりだと時間かかるから、手伝って欲しいの」

「この量じゃそうですよね。大丈夫です、手伝います」

「ありがとう、助かる」

河合さんが台車を持ってきて、段ボールを重ねる。
乗り切らない分は私が手に持ち、そしてエレベーターに向かった。

保管室は2階。
足元に気を付けながら保管室まで行き、そしてふたりがかりで段ボールを仕舞った。

「ふう、ありがとう。戻りましょうか」



河合さんと共にオフィスへと戻ろうとしたその時、背後から声が耳に入る。

それは何やら男女が揉めているような声だった。


その声が気になり足を止める。

「どうしたの?」

「いえ、ちょっと揉めている声が……」

「え?……あ、本当」


それは休憩スペースの方から聞こえる。
気付かれないように静かに、河合さんと共に向かった。
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