十九時、駅前
まあ、独占欲の強い彼氏だったら、
あんなことをいうのも納得できるかも
……しれない。

けど。

私は片桐課長の彼女じゃない。
なのになんで、
いつもあんなに
振り回されなきゃいけないんだろ。
片桐課長にとって私は一体なに?

「待たせた……ってなんで泣いてる!?」

「……え?」
 
片桐課長はその手に持っていた
コーヒーのカップを落とすと、
慌てて車に乗ってきた。
ポケットからハンカチを出すと、
明らかに狼狽えて私に渡してくれる。

「頼むから、こんなところで泣かないでくれ」
 
俯いていた顔を上げてみたら、
まわりの視線が痛かった。

……まあ確かに、
こんなところで泣いてたら注目必至、だよね。

「……はい。すみませんでした」

「うん」
 
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