十九時、駅前
そのままシートベルトを締めると、
片桐課長は黙って車を出した。
少し走らせると、
人気のない公園の駐車場に停める。

「……片桐課長はなんで、
私にこんなに構うんですか?」

「それは……」
 
いつもと違う、動揺している片桐課長。
聞いちゃいけないってわかってる。

……でも。

「私が困ってるのみて、楽しいんですか?」

「……うるさい」

「私はただのおもちゃですか?」

「……黙れ」

「私にだって……ん!」
 
……気が付いたら。
片桐課長の唇に口を塞がれていた。

「……おまえが黙らないから悪い」

「……私のせいですか」
 
そっと指で、自分の唇にふれる。
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