十九時、駅前
……片桐課長の唇が、ここに。

体が熱い。
心臓の音がうるさい。

嫌悪感などまるでなくて、
これじゃまるで、私。

顔を上げると視線が合った。
でも、ぷいっと逸らされた。

「うるさい。……まあいい。携帯、貸せ」

「携帯、ですか?」
 
訳がわからなくて首を傾げると、
片桐課長はため息ついて脱力した。

「番号、知りたいんだろ?」

「はい!」
 
不機嫌そう、だけど手には携帯。
嬉しくて自分の携帯を出すと、
片桐課長は驚いていた。

「いまどき、ガラケー?あり得ない」

「別に不便とか、ないですけど?」
 
……確かに。
大学のときとか
散々スマホに変えろとまわりにいわれてたけど。
別に不便はないし。
なにより、最新機器は使いこなせない。
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