十九時、駅前
「どっち?」

「……こっちで」
 
有無をいわせず聞いてくるので、
思わず選んでしまったら、
片桐課長は速攻で店員さんを呼んで
購入手続きを始めてしまった。

「あの、予算、足りないんですけど!」
 
片桐課長がメモしてきてくれてた、
引っ越し先の住所を
配送手続きの用紙に書き込みながら、
こっそり抗議する。

「ん?ああ。今日、現金?カード?」

「……カードのつもり、でしたけど」

「現金は?」

「片桐課長に立て替えてもらってた、
敷金返そうと思ってた分と、あと少しだけ」

「じゃあ、敷金の金だけ頂戴。
あとは俺が払ってやる」

「そんなダメですよ!」

「……俺の勝手」
ぷぃっ、視線が逸れる。
いつもの、あれ。
……はい。もう聞きません。
片桐課長がなに企んでるのか、怖いけど。
 
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