十九時、駅前
「……ここって、
ほんとにあの家賃なんですか?」

「そうだけど?」

「あれですか?
殺人事件があったとか、
幽霊が出るとかですか?」

「は?」

「だって、こんなきれいで、
広い部屋があの家賃なんてあり得ない……」
 
……ぷっ。

思わず片桐課長の顔を見ると、
必死に笑うのを我慢している。

「あははっ、あはっ、はははっ、
いくらなんでも、おまえに、事故物件なんて、
ははっ、紹介しない、って……!」

「…………」
 

凄い勢いで、
おなかを抱えて笑い出した片桐課長に
ぽかーんとした。

……そんなにおかしいですか?

「きれいに見えるのはリフォームしてるから。
築年数はそれなりにいってる。
あと、ここは仕入れ先の部長の、
親御さんの持ち物でな。
うちの女子社員が住むっていったら、
安くしてくれたから」
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