十九時、駅前
呆然としていたら、
片桐課長は隣の寝室を開けて、
中に置かれたベッドを確認していた。

「やっぱ、クイーンサイズはでかいなー。
でも、俺、寝相悪いし。
……こっちきて、座ってみれば?」
 
ベッドに座った片桐課長は私の手を取ると、
自分の方へと引き寄せた。

「……なに考えているんですか?
自分の家、すぐ近くなのに」

「……別にいいだろ」
 
ぷぃっ、視線が、逸れる。
いいたくないと黙ってしまうこれ、
どうにかして欲しい。
そして、そうされるとそれ以上追求できない、
気弱な自分の性格も。

「今日は送ってやる。車できてるし」

「……ありがとうございます」
< 53 / 92 >

この作品をシェア

pagetop