十九時、駅前
ふっ、僅かに笑った片桐課長の顔に
どきっとした。

……なんだろ?
でもきっと、アルコールが入ったから、だ。

そのうち料理が運ばれてきて、
何故か無言で食べた。
なにか話すべきなんだろうけど、
共通の話題が見つからない。
片桐課長も黙ってる。

「そういえば、さ」
 
食事も中盤を迎えた頃、
ぽつりと片桐課長が呟いた。

「本島さん、酷いんだぞ?
自分のとこで一桁間違って多く仕入れた奴、
俺のとこに押しつけてくるんだ」

「……それ、うちにもきました。
仕方なく原価ぎりぎりで、
社員で分けましたけど」

「ほんとむかつくよなー」
 
……はぁーっ。

片桐課長は大きなため息ついてる。

一課の本島課長から押しつけられた、
大量の豆腐事件はまだ記憶に新しい。
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