十九時、駅前
にっこり笑ってそういわれて、
安心して私も食べ始める。

いつも思うんだけど、
片桐課長が食事をする姿はきれいだ。
マナーがちゃんとできてるのは当たり前で。
お箸の持ち方はもちろん、箸使いも姿勢も。

「ん?」
 
つい見とれていたら、目が合った。
不思議そうな顔をした片桐課長の目が細くなる。
その笑顔に無駄にドキドキした。
 

食後にコーヒーを淹れて、
買ってきてくれたバームクーヘンを食べる。

「……そういえば。
片桐課長って煙草吸いませんよね?」
 
……うん。
本島課長は吸うし、
部内の三分の一くらいの男性社員は吸うし。

「え?ああ。
昔は吸ってたんだが、
吸うと料理の味が変わるだろ?
なんか、
それが作ってくれた人に失礼な気がして、
この仕事始めてやめた」

「そうなんですね」
< 61 / 92 >

この作品をシェア

pagetop