十九時、駅前
「片桐課長の担当取引先さん主催の
講習会に出てて、
終わり時間が遅いからって
送ってくれただけですよ」

「ほんとにそれだけ?」

「それだけ、です」
 
……いや、実は一緒に暮らしてますけど。
でもそんなことをいうと、
火に油を注ぐだけなので口を噤む。

「……おい。なにしてる」
 
男の人の声がして、一斉に皆、その方向を見た。
そこにいたのは……片桐課長。

「あの、昨日、
笹岡さんが片桐課長に送ってもらったって……」
 
片桐課長の登場に、
佐波さんはしどろもどろになっている。

「ああ。
俺の担当のとこの、
講習会に参加してくれたから。
終わりが遅かったから、なんかあったら悪いし、
送ってやっただけだけど」

「それって、
笹岡さんだからじゃないんですか?」

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