十九時、駅前
呆気にとられている、
片桐課長を残して屋上をでる。
自分でも、なにをいったのかわからない。
でも、もう……。
 

……その日。
片桐課長は帰ってこなかった。

余ってしまった夕食を捨てると、涙が出た。

……あんなこといったんだ。
もう二度と、帰ってこないかも。
でも、これでよかったのかもしれない。
私ばかり気持ちを募らせて。
あの人の考えてることなんて、
ちっともわからなくて。

これでよかったのだ、
そう思いながら泣いている
自分がわからなかった。
 

翌日、片桐課長は休んでいた。
風邪をひいたということだけど、
昨日雨に濡れたんだ。
無理もないことだと思う。
私も少し、風邪気味だし。

そして、今日、顔を合わせずにすんだことに、
何故かほっとしている自分がいた。
 
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