十九時、駅前
「……振られたときの保険と、
一度リセットしに帰ってた」

「リセットって」

「……そのまま出社したら、
顔に出そうだったから」

「……なんだ」
 
体中から、力が抜ける。

私いままで、なにをもやもや考えてたんだろう。

「大体、おまえだって鈍すぎるだろ?」

「少しくらい、
言葉で説明してもらわないとわかりません。
大体、接点なんてほとんどなかったのに、
なんでですか?」

「おまえ、いっつも一生懸命だから。
……ほら、ソフトボール大会のときとか」
 
……ああ。悪夢のソフトボール大会。
レクリエーションの一環で、
年に一回、部内でソフトボール大会があって。
今年は二課が幹事だからって、
私に押しつけられて。
右も左もわからずにあたふたしてた、あれ。



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