十九時、駅前
「わかったな?」

「……はい」
 
有無をいわさない迫力で
数枚の千円札を握らされ。
なにもいえなくなった。

「釣りはいらんが、領収書はもらってこい。
いいな?」

「……はい」
 
……なんで領収書がいるんだろ、
と首を捻りつつ、
片桐課長に見送られて改札をくぐる。
電車に乗るとため息が出た。

……一体、今日はなんだったんだろ?
意味がわかんない。
だけど、
駅から家までタクシーで帰れって
いってくれたことには感謝だ。
最近、
途中の公園で痴漢が出て騒ぎになってたし。

どうにか座れた席で、本を広げる。
家の最寄り駅まで一時間。
私が楽しみにしている読書タイム、なんだけど。
今日は少しもあたまに入ってこなかった。
 


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