ウサギの王子に見初められ。
沙耶と会社の近くでランチをする。本社にいてお弁当派じゃない同期女子は私達だけなので、2人で食べることが多い。

なんと、沙耶は平内さんと席が近く、少し一緒に仕事をする関係にあるらしい。うそ、それこないだまで私のポジションだったのに。


「平内さん、ほんとかっこいいよ。仕事もテキパキやってるし、なんか色気あるし、その上私とかにも気を遣ってくれるし、急に仕事やる気出てきたわ」

沙耶は私を気遣うことなく自慢げだ。いいなあ。でも、ほんとダメ元でも告白してすっきりしといてよかった。もやもやしたまま離れちゃってたら、たぶん引きずってた。


「開発、イケメン2人抜けてがっかりでしょ」

「2人? あ、三上くんカウントしてる?」

「何よ、してないの?あんた平内さん見すぎてハードル上げてんじゃないの。三上だってイケメン王子だよ」

そうなんだ。王子って見た目も含むのか、やはり。

「まあ中身がねぇ、残念だよね、草食っていうか女子力高いって言うか。今だってお弁当でしょ」

「みたいだね。寂しい寂しいって言ってたから、同期会とかやってあげようよ」

「もう、うちの代ってなんで私頼みなの?上の方の人たちは男のひとが仕切ってるのが普通なんだよ、同期会って。弱すぎるんだよ、今の若者たちは」

今の若者って。比べてるの平内さんの代とかでしょ、3年しか変わらないよ。うちの代は、沙耶の迫力にかなう男の子はいないよね。

「沙耶が選んでくれたお店の方がみんな喜ぶよ、センスいいもん。あ、でもこないだ三上くんがおしゃれなとこ連れてってくれた。会社の近くだから今度2人で行こうよ」

「なになに? 三上と2人? 平内さん諦めて三上に行っとく? 意外とハンターだね、真奈。いいかも、似合うよ、なんかかわいい2人だよ」

沙耶が目を輝かせて乗り出してきた。

違う違う。沙耶はすぐ恋愛に結びつける。噂好きだし、変なこと流されないように気をつけないと。

「異動で落ち込んでたから話聞いただけだよ。もう移っちゃったし、なんにもないよ」

「そうなの? でもなんかあったら絶対教えてよ、黙っとくから」

嘘でしょ。同期でも先輩でも、いろんな噂大好きなくせに。まぁ私もいつも楽しませてもらってるけどね、沙耶の謎の情報収集力で。
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