ウサギの王子に見初められ。
練習を始めるところだったチームの皆さんには挨拶だけして、私と沙耶はベンチ脇から試合観戦することにした。
今日は練習試合でこじんまりやるだけらしいので、実際そんなに派手な応援したら目立ちすぎる感じ。
「ピッチのこんなに近くで見るのって久しぶりでワクワクする」
と三上くんに言うと、
「狭い分プレーが速いから、面白いよ」
とニコッと微笑んでくれた。
やだ。なんかすっごく意識しちゃうんだけど。顔とか赤くなりそうでやばい。
やっぱり普通に二人で会えば良かったかも。沢田さんになにか勘付かれたりしたら嫌すぎる。
ちょっと離れてよう、今日は。
フットサルは1チーム5人。
フォワード、両サイド、ディフェンス、ゴールキーパーというのが基本のポジションだけど、戦術に合わせて柔軟に動く。
私も先に調べてあったけど、最初は出ないという沢田さんが熱心に説明してくれた。
三上くんは右サイド。チームの中では若手なので、動くことを要求されるポジション。
あ、ボールを取った!
ワンタッチでパス。
ギリギリでうまく渡ったと思ったけど、取り返された。
うん、確かに速い。
それに、三上くんはうまい。運動量も多いけど、視野が広いんだ。
試合展開は五分五分に見えた。20分ハーフの真ん中で、右サイドとディフェンスの二人が交代する。
そこから急展開で、こっちのチームが優勢になった。
ディフェンスが司令塔になって、的確にパスを回している。
「あの人すごい」
思わず呟いたら、「上野さん。めちゃくちゃうまいでしょ」とベンチに入った三上くんが自慢気に教えてくれる。
「フォワードの人?」
と沙耶が聞くので、三上くんがディフェンスの動きがどう影響してるのか解説していた。
三上くんらしい丁寧な説明だけど、長ったらしくなくすっと頭に入る。頭の回転がいいんだなってほんと思う。