ウサギの王子に見初められ。
後半になると、相手チームのサイドに出てきた人がたぶん割と新しいメンバーで、動きが固かった。
チャンスだと味方チームは盛り上がっていたけれど、相手も負けじと食いついてきて、アッと思った時には衝突してフィールド内で二人が倒れていた。
味方の選手はすぐに立ち上がったけど、相手は起き上がれない。あの慣れてなさそうな人だ。
選手交代になり抱えられるようにしてベンチに戻って、痛そうに足を伸ばして椅子に座り込んでいる。冷却スプレーみたいのをかけてるけど、違うんじゃない?
向こうには女の人は誰もいなくて、みんな試合に夢中で彼を気にかけている様子もない。
ねえちょっと。彼は自分の状態がわかってやってるのかな。
「ちょっと行ってくる」
隣の沙耶に一声かけて、向こうのチームのベンチに走っていった。
「あの、大丈夫ですか」
声をかけるとものすごくびっくりされるけど、そんなの気にしてられない。マネージャー経験があることを伝えて、足の様子を見せてもらう。やっぱり足が曲げられない。こむら返りだ。
「これ、冷やすの逆効果です。たぶん足がつっている状態なので、温めて伸ばして治すほうがいいです」
「そうなんだ。でもつってるにしてはものすごく痛いんだよね。肉離れとかじゃないかな」
「ハムじゃなくてふくらはぎなので、たぶんこむら返りですけど、ちょっと伸ばしてみましょうか。違いそうならすぐやめますね」
靴を脱いでもらい、ふくらはぎを少し手で温めるようにしてから、親指を持ってゆっくりと膝側に傾けて伸ばしていく。
いててて!と声がするけど、うん、これは伸びている感じ。「大丈夫。すぐ楽になるから我慢して」と顔を見て安心させて、もう一度ゆっくり伸ばす。