ウサギの王子に見初められ。
家まで送ってくれるという三上くんと、今日の試合の話やフットサルのルールの話をいろいろしながら帰る。
三上くんがすごくかっこよかったと言いたかったけれど、なんだかあざといような感じがして言えなくて。
「上野さんかっこいいでしょ」と言われるままに「ほんとにうまいね、あの人。性格的にも司令塔が似合ってる感じだね」とか上野さんばかり褒めるみたいになっちゃった。
家の前まで来て、また見に来てよと言われたから「行く行く。マネージャーはやらないけどね」と喜んで答える。
今日は普通に過ごせてよかった。返事を聞かれたり、ぎこちなくなったりお互いしないで、今まで通り。
そのまま帰ろうとする三上くんに「あ、合鍵。今取ってきていい?」と聞いた。バッグに入れとくの忘れたの気になってた。
「そのまま持っててくれない?真奈ちゃんさえよかったら」
さりげなく言われて「いいよ」と頷きそうになり、いやいやでも合鍵持ってるって。と思いとどまる。
「忘れちゃったときとかさ、近くに持っててくれる人がいると助かるし」
付け足した三上くんに、慌てて「そうだよね、近所に一つあると安心だよね」と返した。
そうか、そういうことか。なんかこないだ好きとか言われちゃったし、てんぱっちゃった、急に。
「ありがと。またね」
と三上くんが帰っていくのをドアの前で見送った。
ねえ、でもさ、合鍵持ってるってやっぱり気になるよ、私。
自分のことだけ言って、私の気持ちを聞く気はないの? 言うだけ言ったら満足して終わり、とか?
前はしょっちゅう連絡くれたのに、最近あんまりないのはなんでなの?
また見に来てよ、の『また』っていつのことなんだろう。来週?もっと先の試合のこと?
今まで通りでホッとした気もするけど、なに考えてるのかなって、一人になるとやっぱりまたモヤモヤし始める。
恋愛経験の足りない私には、疑問ばっかり多くなって、でも直接聞く勇気はなくて、本当にさっぱりわからない。