ウサギの王子に見初められ。

視線を感じた気がしてちらっと見たら、隣で香さんがなぜか私をガン見していた。

「今の、なに?」

「へ?」

「次はイケメンやめとくって言ってたのになぁ」

香さんがすっごく嬉しそうに言って「そうなんだぁ、知らなかった」と一人小声でつぶやきながら自分のPCに戻っていった。

うそでしょ。香さんにもバレバレみたいな態度だったかな、私。でもそれ以上突っ込んでこない香さんに弁解もできず、何もなかったように仕事に戻った。




「何一人でにやけてんの」

と平内さんが香さんに声をかけてきた。三上くんと打ち合わせが一緒でついてきたのかな。

「別に。三上が帰ってきてうれしいなって思っただけ」

「ほんと嘘下手だね。 あ、そうだ真奈ちゃん、俺ちょっと今日いけないかも。人数足りてるよね?」

「大丈夫です。同期も結構くるので、座敷占領は問題ないです。遅くなってもきっと沢田さんとかいるので、ぜひ」

「わかった。遅れていくよ。じゃ」

座っている香さんの頭を軽くなでて、平内さんは開発室から出て行った。

付き合い始める前から平内さんは香さんにこんな感じなので、逆に周りに怪しまれてない。香さんにあしらわれてると思われてるんだ。


「香さんに会いに来たんですね。愛されてますね」

いつも通り香さんをからかってみたら、なぜかいつものように照れずに余裕の笑顔が帰ってくる。

「真奈、今度ゆっくり話そうね」

見透かされていることが分かって、今日は負けた、と諦めた。

でも香さんは、沙耶たちみたいに変に突っ込んできたりしない。大人だからなぁ。恋愛経験豊富そうだしね。やっぱり相談に乗ってもらおうかな。

< 50 / 67 >

この作品をシェア

pagetop