ウサギの王子に見初められ。
「ごめん、そんな顔しないで。あー、オレほんとかっこ悪いよね」
でも三上くんの反応は、予想外だった。怒ってるどころか、反省しているみたい。なんで?
「ごめんね、だいぶアルコール抜けたから送ってくよ。遅くなっちゃったね」
「……なんで、三上くんが謝るの?」
「片思いってわかってて言ったのにさ、ごめんね、言っちゃってからオレ、どうしていいかわかんなくなって。二人で会おうって言ったら真奈ちゃん困るかなと思ってフットサルに誘ってみたんだけどさ、まさか上野さんに横からさらわれるとか思ってなくて」
いかにもへこんでる様子でうつむいた三上くんは言う。慰めてほしそうな三上くんを久しぶりに見た。
「かっこいいって言ってたもんね、真奈ちゃんも」
慰めるわけにもいかないけど、誤解のないように言ってみる。
「さらわれてないよ、全然」
「そうなの?」
わかりやすく嬉しそうな顔をして言われる。
そんな風に思ってるなら、どうして連絡くれないの?
三上くんが怒ってないってわかってほっとしたら、なんだか私のほうがイライラしてきちゃった。
「三上くんて、一人で勝手にそういうこと言ってばっかりで、全然私の話聞いてくれないよね」
「そうかな。ごめん」
「あれから全然連絡くれなくなって、傷つけるようなこと言っちゃったのかなとか、やっぱり好きじゃないって思ったのかなとか、一人ですごい考えてたのに。二人で会うのは困るなんて、私、いつ言った?」
言いながら、ああかわいくない、と思ってた。でも止められなかった。
「上野さんなんて、全然関係ないのに。だからマネージャーなんてやりたくないって言ったのに。そうやってみんな勘違いして。私はサッカーが好きなだけなのに、なんでいちいちそういう話にならなくちゃいけないの!」
こんな夜に、部屋の中で大きな声を出した。ヒステリーか。
ああ、もう、やだ、と思って「ごめん、帰るね」と部屋を出ようとした。
「待って」
三上くんに腕をつかまれる。「離して」と言っても離してくれない。