海で出会った彼に
「うっ」
「つ、翼?!」
急に翼が胸をつかんで苦しそうにうずくまる。
「…お迎えかな…」
「は!?なんて?!」
「…立海…」
「え?!」
「うっそぴよーーん」
な……なんだとぉぉぉ!!
「心配したじゃん!!!」
「へへへ〜」
「もう!」
「…楽しいか?」
「…うん」
「そっか。楽しいって思えるのは…立海が自分のことを好きになった証拠だ」
「え?」
「立海はもう…自分の人生を自分のものにしたんだ。楽しいと思えるのもつまんないと思えるのもうれしいや悲しい。そう思えるのも、生きている証拠。」
生きている…証拠…
「つらいことがあったなら涙を流せばいい。壁にぶち当たった時は思いっきり体当たりしてみればいい。…その分強くなれるから」
私は頬に涙が伝うのがわかった。…どうして?どうしてこんなにも心に染みるんだろう。
「…誰にだってうまくいかないことはある。うまくいかなくて嫌になるかもしれない。だけどうまくいく人生なんてつまんねぇじゃん!…どうせならうまくいかない人生を変える方が楽しい!」
「人生ってそんなもんだろ!」
翼。
「立海、人生って…」
「すごく綺麗だな」
うん。私もそう思う。…だけど私は翼の方が綺麗だと思う。まっすぐな心…決して折れない。
「私、翼が…好き」
「……」
「…」
言ってしまった。…だけど、隠したくなかった。
「…好きって気持ちは…美しいな…」
「…?!…。…私も…私もそう思う…!」
祐に好きって言われた時うれしいって思ったけど、美しいって思った。まっすぐなその心が
…好きって想いが…
「…ほら、寒くなってきた。中入ろう」
「…うん」
返事はわかってる。…翼には好きな子がいる。…けど、悲しくはない。伝えられたから満足してるし、好きって気持ちが芽生えたことを誇らしく思うから…
「ほら、寝ろ」
「うんおやすみ」
「……」
「翼?」
「…おやすみ。 立海 」