1ヶ月の(仮)夫婦

「それでね、怪しまれない為には準備が必要なんだ」

「準備?」

「そう、細かいことはまた説明するけど、
その準備には時間がかかる、その間、君は壱麻と夫婦になってここで暮らすんだ」

「ふ、夫婦!?」

思わず叫んでしまった。いや、これが叫ばずにいられるか。

「これが一番怪しまれない方法だけど思ったんだよ」

「ぇ、ぁ、その…夫婦って…」

「本当の夫婦になれって意味じゃないよ、準備の間夫婦のふりをするんだ」

簡単だろ?
簡単じゃない。
でも話は進んでしまう。

「夫婦生活は準備期間の1ヵ月」

「この家で暮らす」

「壱麻、いいよね?」

それまで一言も発っさなかった壱麻さんに斗麻さんは聞いた。
壱麻さんはあっさりと

「はい、分かりました」

なんの戸惑いもなく頷いた。

「じゃぁ、決まりだね」

そして、私は少し いや、かなり無理矢理に初対面の男の人と結婚することになったのだ。

「杏子さん、よろしくお願いいたします」

「……ぁ…はい……こちらこそ……よろしくお願いします……」

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