1ヶ月の(仮)夫婦
壱麻さんと夫婦生活を初めて2週間がたった。最初は慣れなかった家事も大分こなせるようになった。料理には自信があった。
何せ2年弱レストランで働いてたのだ。
はじめて壱麻さんと夕食を食べた日は、忘れられない、ちなみに斗麻さんもいたけど
「あの……お口にあいましたでしょうか」
「おいしい………」
「え、」
私の料理を口に運んだ壱麻さんが何か呟いた気がする
「杏子ちゃん!うまい!」
「あ、よかったです」
壱麻さんの隣では斗麻さんが美味しそうに料理を凄い勢いで食べている
「杏子ちゃんは、料理上手なんだね」
「ええ、レストランで働いてたので」
「凄いねぇ、自慢の奥さんじゃん。ねぇ壱麻」
奥さん……という言葉に顔が赤くなる
壱麻さんは何も言わず、黙々と食べていた
口に合わなかったのかな。
「壱麻さん、口に合いませんでしたか」
思わずそう聞くと、斗麻さんが突然吹き出した。そして壱麻さんの背中をバシバシと叩く。痛そう。
「あははっごめんね杏子ちゃん、こいつうまい飯食っても表情変わんねぇし、うまいって言わないの。ダメじゃないか壱麻、こういうのはきちんと言わないと」
「痛いです。あとうざいです」
「そこは言わなくていいからさっ、ほら、言ってあげなよ。杏子ちゃん不安がってるぜ」
「………美味しいです、とっても、すごく」
顔を反らしたまま早口に言われたけど、その言葉は斗麻さんよりも耳の奥に残り、また、私の顔を赤くさせた。
そして嬉しい気持ちでいっぱいになった。