1ヶ月の(仮)夫婦
私は"月女家"の一人娘として両親にそりゃあ大切に育ててもらった。父も母も仲が良くて、優しくて、大好きだった。
私は世間的にいうとお嬢様だった。"月女"はとある一流企業のトップで父はその"月女グループ"の社長、話せば長くなるが代々続いている企業なので私も大人になったら父のようになるんだと、小さい頃から言われ続けてきた。
学校は有名な私立に通っていた。今思うとほんとうに私は恵まれていた。欲しいものはすぐに手にはいって、優しい家族がいて、学校でも友達に囲まれて、幸せだった。 づっと続くと思っていた。
ーーーーそれは突然だった。私が16歳の時
学校から帰ってきた私はまず 何が起こったのか理解できなかった。
いつも明るいはずの家が真っ暗で、嫌な予感がした。
足を踏み出すたび、不安が大きくなる。
リビングには、明かりがついていないリビングには 今まで見たこともない憔悴に満ちた両親がいた。母は 泣いていたのだろうか、虚ろな目で私を見て
『………杏子』
小さく呟くように、そして母はその場で泣きくずれてしまった。
『お母さま』
嫌な予感は大きくなる。
『杏子』
『……お父さま』
泣きくずれる母と同じように憔悴に満ちた顔の父は私の肩を掴み
『すまない』
許しを乞うように、掴む腕に力が入る、
『すまない 杏子』
やめて、言わないで、私の………私の予感があたってしまう、現実になってしまう。
『杏子、聞いてくれ、父さんの会社が潰れた、この家も売ることになる』
いやだ
『借金がある』
やめて
『杏子、杏子』
それ以上は
『一人でも強く生きてくれ、父さんと母さんはいつも杏子の見方だ』
いわないで
『ほんとうにすまない…………幸せになってくれ』
嘘だと言って
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