イジメ返し2 ~恐怖の復讐劇~
「マミが開き直ってどうすんのよ」

呆れたように言う綾香。

何も知らなくくせに。あたしがどんな思いで必死に生きているのか全く知らないくせに。


「――ふざけんな」

低く押し殺した声でそう呟くと、床に転がっていたアルミの錆びたバケツを手に取った。

きっと今日、スマホを壊したことを知れば、お母さんはあたしをつねり、叩き、罵る。

ただでは済まされない。そんなキッカケを作ったのは、マミだ。

――あたしはもう終わり。無の境地を知った気がした。

そこからはほとんど無意識だった。

バケツをマミの頭めがけて叩き付けたことはなんとなく理解した。

でも、そのあとのことはさっぱりわからない。

ポタポタっと汚いトイレの床に赤いシミがしたたり落ちる。

マミが何か叫びながら、おでこの辺りを押さえている。

カンナが大声で笑う。

綾香があたしのバケツを取り上げて、あたしの顔を覗き込んで大声で何かを訴える。

何も聞こえない。何もわからない。

あたしは回れ右してトイレを飛び出し、外にいた野次馬の間を潜り抜けた。

そのとき、ふと野次馬の中にいた逢沢優亜と目が合った。

何か言いたげた目でこちらを見つめている。

あたしは彼女から目をそらし、歩き出す。

そこからどうやって家まで帰ったのか、あたしはよく覚えていない。
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