イジメ返し2 ~恐怖の復讐劇~
「ただいま~」

アパートの扉を開けると、タバコの煙が勢いよく外に吐き出される。

「くさっ!タバコ吸うなら換気してよね!」

文句を言いながら玄関で真新しいローファーを脱ぐと、足元に転がった酒瓶に足を取られて転びそうになる。

昼間から酒飲んでるの?

テーブルの上に視線を向けるとものすごい数のビール缶が詰まれ、両親の足元にも転がっていた。

「おかえり」

背中を向けたまま適当に返す母。

両親は何やら真剣な表情で話し合っている。

もしかしたら、パチンコで大損したのかもしれない。

呆れながら自分の部屋に入り、ベッドサイドの紙袋に手をかける。

「あっ、やっぱりあった~!漫画と……雑誌と……あっ、これももういらないよね」

みやびから借りたまま返していなかったものを探し出して一つにまとめる。

でも、大半がみやびに無断で借りた物。

人の物は自分の物、自分の物はもちろん自分の物。

借りたものを返すことはせずほぼ借りパクしていた。

そして、用が無くなると返すこともなく売りさばく。

罪悪感なんてこれっぽちもない。あたしはそうやって育てられてきた。

荷物を手に家を出ようとしたとき、母に呼び止められた。

「ねぇ、マミ。これ、どっかに捨ててきてよ」

「えっ?なにこれ。誰のよ」

明らかに高そうな茶色い厚手の革の財布。

「アンタは何もしらなくていいんだ。とにかく、足がつかないように誰にも気付かれない場所に捨ててきて」

渡された財布を開くと、中身は全て抜き取られていた。

でも、カード類や身分証は入ったまま。

「この財布、高いと思う。中身だけ捨てて財布は売ればいいのに」

「――ダメだ!!いいから早くどっか遠くへ捨ててこい!勝手なことするなよ!」

いつの間にか母の後ろに立っていた父の鬼気迫る姿に驚く。

「分かったよ!捨ててくればいいんでしょ!?」

捨て台詞を吐くと、あたしはそのまま勢いに任せてアパートを飛び出した。
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