イジメ返し2 ~恐怖の復讐劇~
「よしっ、テンポがよくなってきた」
部屋にこもりピアノの練習していると、いつの間にか夜になっていた。
時計の針は21時過ぎ。
そういえば夕食もまだだった。
普段なら20時には夕飯を食べているのに。
不思議に思いながら階段を下りてリビングに行くと、両親がソファに座り頭を抱えていた。
「お母さん、帰ってたんだ?」
キョロキョロとリビングの中を見渡しても先ほどの女はいない。
鉢合わせしなくてよかったね、と継父に心の中で皮肉を言ったとき母が大声をあげて泣き出した。
「……どうするのよ!?私たちの生活はちゃんと保障されるのよね!?そうでしょ!?」
「ちょっ、どうしたの?」
継父の肩を叩き、大声で喚き散らす母を唖然を見つめる。
「綾香に言っても分からないかもしれないが、さっきなぜか急にSGグループから事業の打ち切りの打診があってな」
「ふーん。それがどうしたの?」
「SGはわが社の一番のお得意様なんだ。あの会社に切られたらうちみたいな中小企業は倒産してしまう。こんなことは初めてだ」
顔を真っ青にする継父を鼻で笑う。
「へぇ。大変だね。さっきまで楽しそうにしてたのに、天国と地獄ってこういうこと?」
数時間前まで母のいない家に女を連れ込んで楽しそうにしていたのにね。
「綾香……あなたお父さんがこんな大変な時によく笑っていられるわね?あなたにだって関係のあることなのよ?これから先、この家にだって住めなくなるかもしれないのよ?分かっているの?」
「分かってるよ、それぐらい。でもいいよ。あたしそうなったらこの家から出て行くし。それに――」
その方が都合がいい。
正直、お父さんと一緒に暮らしたいという話をする手間が省けた。
「――あたし、夕飯いらないから」
「綾香……!!」
「じゃあ」
呼び止める母を無視して階段を駆け上がる。
大丈夫。順調だ。何もかも思い通りに進んでいる。
部屋に飛び込むと、スーッと息を吸い込んだ。
コンクールまであとわずか。
明日は若菜ちゃんにピアノの特訓に付き合ってもらうことに決めた。