イジメ返し2 ~恐怖の復讐劇~
ピアノのセッティングが終わり、課題曲の練習を始める。

「今の感じすごくいいわ。でも、最後の部分にもっと感情を込めて。強弱をしっかりと」

若菜ちゃんの指示は的確だった。

逢沢と西園寺は黙って演奏を聴いている。けれど、時折目を見合わせて微笑んでいる2人が妙に気にかかった。

「少し休憩しましょうか?」

若菜ちゃんの言葉に大きく背伸びをしたとき、西園寺カンナが唐突に椅子から立ち上がって音楽室のカギを閉めた。

「ねぇねぇ~そういえばさぁ、ずーーーっと聞きたかったんだけどぉ。若菜先生の煙草のこと教頭に密告したり関先生との不倫の写真撮ったの綾香ちゃんだったんでしょ~?」

西園寺カンナの言葉に目が点になる。

タバコ?関先生との不倫?全く意味が分からない。

若菜ちゃんが西園寺の言葉にゆっくりと顔をあげ、じっとあたしを見つめた。

「若菜先生ってば可哀想~。綾香ちゃんのことすっごーーーく信用してこうやってピアノまで教えてあげてたのにねぇ。火事で全財産なくしちゃうし、来年度の正式採用の話もなくなっちゃうしねぇ~。先生ってばずーっと勝ち組だったのに、負け組になっちゃったねぇ~?」

「ちょっ、アンタ何言ってんのよ!?」

西園寺が面白おかしく話すのを若菜ちゃんは黙って聞いていた。

けれど、様子がおかしい。口の端をピクピク震わせ目線を左右に漂わせる。

「綾香ちゃんはいいよねぇ。なーんにも失ってないもんね~。先生のこと校長に密告して内申点稼ぎでもしてたのぉ~?そうすればいい音大いけるかもしれないもんねぇ。若菜先生はいけなかった音大に、綾香ちゃんはいけるかもねぇ」

「何言ってんのよ!!」

「綾香ちゃんって、若菜先生のことただの踏み台にしか思ってないんだね~」

意味が分からない。あたしが知っていることと言えば、若菜ちゃんが一つ年上の職員を陰で『おばさん』と呼んでいたことだけ。

それ以外に若菜ちゃんに関係するプライベートは一切知らない。
< 236 / 259 >

この作品をシェア

pagetop