イジメ返し2 ~恐怖の復讐劇~
加速
調理実習の日を境に、綾香とみやびとマミの3人はイジメのターゲットを柴村さんからあたしにチェンジしはじめた。
靴を隠され、教科書をゴミ箱に捨てられ、財布の中のお札を抜かれ、体操着を水浸しにされた。
毎日のように繰り返される嫌がらせは日を追うごとにひどくなり、あたしの心をむしばんでいく。
何をされても必死に抵抗していたものの、心はすり減り、朝教室に入ろうとするだけで足がすくみ動悸がする。
そして、追い打ちをかけたのが担任の若菜先生だった。
「――逢沢さん、遅刻ですよ」
朝のHRの途中、あたしは教室の後ろの扉を開け中に入った。
手には水浸しの薄汚れた上履きが握られている。
上履きから滴る水がポタポタと教室の床にシミを作っていく。
それはあたしの心の声。まるで、涙のようだった。
クラスのあちこちから漏れる声。
「うわ……悲惨……」
「マジで……」
同情とさげすみの目がこちらに向けられる。
綾香たちはニヤニヤしながらあたしを見つめていた。
「すみませんでした……」
小声で謝りながら、若菜先生を見つめる。
お願い、気付いて。水浸しの上履きを手に靴下で教室に入ってきたあたし。
明らかに異常なこの事態に気付き、『どうしたの?』と尋ねてほしい。
そうすることでイジメがなくなるとは思えない。
けれど、イジメの抑制にはなるかもしれない。
「何しているの!そんなところに立っていないで、早く上履きを履いて自分の席につきなさい!」
でも、そんなあたしの期待もむなしく若菜先生はそう冷たく言い放った。