ある夏の思い出〜よつばの約束〜
「混んでるね…」

駐車場は満員、入り口は人で溢れかえってるという状況だった。

「毎年夏休みになるとこんなだ」

「そうだっけ?」

「あぁ」

「あんまり並んだ記憶とかないんだけど…」

「親が並んでくれてる間俺ら遊んでたんじゃねぇの?」

「なるほどね」

私が引っ越したのは小学校入学前。よく考えると、確かに私と彰人は横で勝手に遊んでいた。

もう1人…梨奈。

幼稚園で仲が良かった、しっかりした女の子。今もきっと彰人と同じ学校。

でもなんだか聞くのが怖かった。梨奈は可愛くてしっかりした賢い少女となっているだろう。もし…なんだか嫌な気持ちが芽生える。

嫉妬というやつだろうか…?

そんな気持ちを振り払った。

「でもどこからこんなに人が…」

「それは毎年思う…」

少し笑いあって彰人が口を開いた…いや、開いて固まった。

「きゃー!笠原くん!!」

ぎょっとして2人でその声の方向を見ると、…10人くらいの女の子集団。

「偶然だね!今日は他クラスの友達と遊びにきたの!一緒に遊ばない?」

「きゃー!1組の委員長笠原さんじゃん!」

「今日はお一人ですか??」

「私あなたのファンなんです!!」

寄ってたかってそんなことを言っている。…すっごい、モテモテじゃないの…

なんだかムッとする。彼女たちに私が見えていたらいいのに…

それに、彰人に私があなたたちに見れていないことを気づかれたらどうしてくれるのよ!

「いや…今日は用事があるから」

「そんなこと言わずに!」

「いや無理だから、ていうか迷惑」

彰人は冷たく突き放すように言った。そして、急に手をつかまれた。そして引っ張られる。


暖かい手…

その手がとても嬉しくて…

後ろから10人の女子のクールだのかっこいいだのという黄色い声が聞こえてきた。

…うるさい!いい気分になっているのに!
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